数ある中国武術の拳種の一つとして太極拳が誕生した。
中国武術と太極拳の起源を簡単に紹介する。
1−1 中国武術の起源
古今東西に限らず、武術の起源は人類の闘争の歴史とともに始まる。それが一つの体系にまとまり、術としてまとめられたのはいつのことか?
殷王朝(紀元前17世紀頃紀元前1046年)の時代では、殷王による徴集を受けると普段は
農耕に従事していた氏族の構成員たちが武器をとり、出征する軍隊を編成した。[1]
軍備には、戈や矛、弓矢、木製の盾、刀などが使われた。戈や矛の材質は青銅製で、
弓矢の鏃の材質は石器や骨器なども使われた。
また殷・周の時代には既に「文舞」と「武舞」の2つが行われていた。[2]
武舞は踊り手が武器を持ち、集団で舞踊するもので、軍事訓練に用いられた。そのなかには徒手での戦いを表現したものもあり、そこから拳術の套路(型)が生まれたのかもしれない。
後漢時(紀元後25~220年)に著された「漢書」の「芸文志」には「兵書の部」として、当時存在していた兵書を分類した目録があり、「手搏六篇」「剣道三十八篇」「蒲苴子・弋方四篇」の書が記されている。
手搏とは、徒手で戦う拳法の別称であり、当時すでに拳術や剣術が体系化され、兵書としてまとめられていた事がわかる。
参照元:
[1]:https://ja.wikipedia.org/wiki/殷
[2]:https://baike.baidu.com/item/武舞/4814386
1−2 門派拳術の設立
明代(1368~1644年)になると、武術の記録は急に具体的になってくる。「武編」「紀効新書」「陣紀」「武備志」といった武芸書が次々と著されており、図解入りで当時の武術が記録されている。
またこの時代、少林寺が棍法で名を高め、民間に武術が広まっている。
現在中国でみられる門派のほとんどは明代から清代(1616~1912年)に誕生したといわれる。
1−3 太極拳の誕生
現在太極拳の起源は諸説存在し、確実といえるものは存在しない。その中で代表的な諸説が、
- 陳家溝起源説・・・陳家溝の陳王庭(1600~1680年)が創拳したとされる。武術の系譜を辿った先にあたる人物の一人。
- 張三豊創拳説・・・楊澄甫(1883~1937年)の著作《太极拳体用全書》の中で:”先大父更詔之曰,太极拳創自宋末張三丰”と記されている。また李亦畲(1832-1892)の著作《太极拳小序》にも:”太极拳始自宋張三丰,其精微巧妙,王宗岳論詳且尽矣。”と記されている。張三豊(1333~1458?)武術一大流派武当派の開祖としても知られる。
- 王宗岳創拳説・・・王宗岳(1525~1606年)、山西省絳県人。王宗岳の著作《太極拳論》,にて初めて太極拳という名称が出現する。著作に『太極拳論』、『太極拳釋名』、『十三勢歌』(一名『十三勢行功歌』)、『打手歌』の四編があるとされる。武当趙堡(和式)太極拳の創始者とも言われている。参照元:https://baike.baidu.com/item/王宗岳/3807417