筋トレを動作レベル向上に役立てる方法

前回、筋トレをした結果、動作がやりにくくなる原因を3つ書きました。

 

 1、可動域の変化

 2、筋肉バランスの変化

 3、意識の変化

 

主に以上の3つの原因により、目的の動作がやりにくくなります。

 

今回はそれぞれの対処法です。

 

まず、

1、可動域の変化 に対する対処法

 

前回書いた通り、筋トレをすると多くの場合、可動域が小さくなります。

しかも身体の可動域というのは普段あまり意識されないので、

筋トレによって可動域が小さくなっていても、それに気づかず、

いざ実際の動作をやってみると、ぎこちなさを感じるという現象が発生します。

 

こういった現象の対処法の理屈は非常に簡単です。

 

それは、目的の動作の適切な可動域に戻すこと。

 

前回と同様、刀を振ることを例にあげます。

刀の遠心力に負けないようにするために脇を締める筋肉が必要。

だからそれに関与する筋肉の一つである胸筋を鍛える。

胸筋をある程度鍛えた後、可動域が小さくなり刀が振りにくくなった。

 

そこでどうするのか?

さっき書いた通り、刀を振る動作の適切な可動域に戻すこと。

 

簡単に言うと、ストレッチをして可動域を戻します。

 

そのストレッチを大きく分けると、

静的ストレッチと動的ストレッチ。

 

ここでは前提として、筋トレをする前が”適切な可動域”で筋トレ後にその状態から少し硬くなったということとします。

 

筋トレをして筋力が強くなると、身体は顕著に硬くなります。

例えば、背中で両手を組める人がベンチプレスをしばらくの期間やって、挙げられる最大重量が上がった時、前と同じようには背中で両手を組めなくなっていたりします。

もし仮に両手を背中で組める可動域というのが、刀を振る適切な可動域であった場合、

当然そこへ戻してやる必要があります。

 

そこで、硬くなった方向を見つけ、逆方向にストレッチしてあげます。

静的ストレッチでの注意点としては、様々な角度でストレッチをすること。

今回は胸筋を例にしているので、胸筋のストレッチで説明すると、

胸を開くストレッチを最低でも3方向、更に同じ3方向を肩の高さ(=肩甲骨の高さ)を変えて行うこと。

 

これは、目的があくまでも動作レベルの向上なので、1方向にだけ可動域が戻っても足りないので、きちんと適切な可動域に戻すために、様々な角度で行う必要があります。

 

そして、動的ストレッチでの注意点は、

単一方向と円運動の両方を行うこと。

静的ストレッチでも動的ストレッチでも単一方向だけでは、ある角度は伸ばし過ぎたり、ある角度は硬さが残ったりと、そのバランスを上手くとるのが難しいです。

だから必ず円運動、ここでは腕を大きく回す動的ストレッチを行い、その微妙なバランスをとっていきます。

また円運動中に詰まるような部分をもう一度静的ストレッチで柔らかくし、また円運動をしてその詰まった感覚が抜けたか確認していきます。

これを繰り返していくと、可動域を保ちつつ、徐々に筋力を上げていくことができます。

 

それでは2番目の、

2、筋肉バランスの変化 に対する対処法

 

この問題への対処法は2つ。

1つは、特定の一箇所だけを筋トレし過ぎないこと。

これは対処法というよりは予防法ですが、

今回の例では、脇を締めておくために、それに関与する筋肉の一つである胸筋を鍛えるというものでしたが、

必要だからといって、そこばかりを鍛えているとバランスが大きく崩れることになります。

表演武術をやっていて、極端に胸筋ばかり筋トレしまくってる人はあまりいないと思いますが、

当然、脇を締めるという目的あれば、それに関与するその他の筋肉群も筋トレをする必要があります。

 

そして2つめは、筋肉を自然淘汰させること。

要するに筋トレ後に、目的の動作に必要な筋力は残して、不要な筋力は逆に落としていきます。

 

先ほど、特定の一箇所だけを筋トレするのではなく、その動作に関与する筋肉も同時に鍛えると書きましたが、

それがどの箇所をどの程度の強度で鍛える必要があるのかは正確には測れません。

胸筋を鍛えるのに腕立て伏せをしても、腕は広めにしたほうがよいのか、それとも狭目にしたほうがよいのか?

ベンチプレスの強度は10回が限界の重さに設定するのか、それとも8回が限界の重さに設定するのか?

その後アームカールはどの強度に設定するのか?

などなど考えられる要素は無限にあります。

それらの事を考えるのは当然必要ですし、何度も試行錯誤を繰り返し有効な方法を探す必要はあります。

しかし、どれだけ考えても100%過不足なく行うのは難しいと思います。

筋肉を付け過ぎてしまうこともあるし、足りないこともあると思います。

だから筋トレは最善を尽くして行いますが、バランスの変化は必ず起きるので、筋トレ後にバランスを整えていきます。

 

理屈はちょっと難しそうに聞こえるかもしれませんが、実践は非常に簡単です。

それは、

 

その目的の動作がスムーズに出来るまでひたすら反復練習を行うこと。

そして、徐々に動作負荷を上げること。

 

筋肉というのは非常にシンプルで、状況に適応するだけです。

例えば、どんなに筋肉を鍛えた人でも宇宙にいくとあっという間に筋力が落ちます。

当然重力がなければ、物を持ち上げたり、自分自身の体を起こすのにもほとんど力はいりません。

全身に血液を巡らすでも、重力がないので血圧もわずかで足ります。だから心臓の筋肉も落ちていきます。

逆に、毎日重いものを持つ仕事をしている人は、自然とそれに必要な筋力が強くなっていきます。

 

こうやって筋肉は負荷をかければ強くなり、負荷が少なければ弱くなっていきます。

筋肉はその状況に適応しているだけなのです。

 

だからその負荷に応じて、筋力も淘汰されていきます。

 

よって、目的の動作がスムーズに出来るまでひたすら行うことによって、筋肉を自然淘汰させます。

そして強くなった筋力を利用し、それまで以上の動作負荷に耐えるようにしていきます。

例えば、50回を30秒かかっていたのなら、それを1秒でも短縮できるようしていきます。

 

ここで大事なポイントは、

筋トレをしたことによって、直接その目的の動作レベルが向上する訳ではないという事です。

それは整形されていない粘土のようなもので、確かに形を作る上で絶対必要なものなのですが、それは必ず足したら削ったり、整形する作業が必須になります。

 

もし筋トレをして以前より動作スピードが遅くなってしまっているのであれば、筋トレ後の整形が足りないのかもしれません。

 

余談ですが、動作スピードのタイムを計るなど客観的指標は必須で、筋トレがその動作に役に立ったのかを計る一つの基準になります。

 

そして最後の、

3、意識の変化 に対しての対処法

 

筋トレを集中的に行うとどうしてもトレーニングをしている箇所に意識がいきがちになります。

そしてそれが、正しい力の経路を妨げてしまうことがあります。

 

これに対しての対処法も2つ目同様、目的となる動作を繰り返すことです。

 

ポイントは、スピードや強度を上げるのではなく、意識を普段の通り道に戻してやることです。

刀を回す例では、基本的に腰の力を足が支え、その力を背中、肩、肘、手首そして刀へ伝えます。

胸筋を鍛え、意識が上にあがってしまうと、腰への意識が低くなってしまいます。

意識が上がらないようにしようと思っても、無意識のうちに上がってきてしまいます。

だから肩周りが何もしてないと感じる位、力の出発点を強く意識しながら目的の動作をゆっくり繰り返します。

そして、徐々にスピードを上げていきます。ゆっくり行う練習と速く行う練習を交互に繰り返すと有効的です。

 

以上が筋トレ後の動作がやりにくくなった場合の対処法です。

 

表演武術をやっている人で、競技力向上のために筋トレをしている方は多いと思います。

しかし、筋トレ自体が目的になってしまい筋肉を大きくるすること、最大挙上量を上げることばかりに意識がいってしまうと、

競技力向上どころか、それが競技の妨げになってしまうこともあります。

競技力向上のための筋トレという意味では、筋トレ以上にその後の対応のほうが重要だと教わってきました。

プロ選手のそういった筋トレに対しての意識は、自分にとっては大きなパラダイムシフトでした。

ただ筋トレ後に適切に対応すれば、筋トレは競技力向上に非常に有効な手段になります。

 

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