上虚下実(じょうきょかじつ)とは
太極拳の要求に”上虚下実(じょうきょかじつ)” というものがあります。
「上を虚にして下を実にする」という意味なのですが、
まず、
虚(きょ)とは、空っぽや弱いことを指します。
実(じつ)とは、満たされた状態、強いことを指します。
よって上虚下実とは、「上は空っぽで下は満たされた状態」 を意味します。
人は緊張すると肩に力が入ります。
人前で話をする機会があまりない人であれば、 いきなり100人の前でスピーチをして下さいと言われれば、 自然に肩に力も入ると思います。
こういった状態は上実下虚(じょうじつかきょ)です。
上が満たされて、下が空っぽ。
アップアップで足腰に力が入らない状態です。
また例えば凄く苛立った時、「頭に血が上る」 という表現をしますが、これもまた上に上がってしまって、 下が相対的に空くという上実下虚の状態です。
これらのような緊張状態では本来持っている能力を十分には発揮で きません。
太極拳だけでなく、 ほぼ全ての事においてこういった上に上がってしまった状態( 上実下虚)では物事は上手くいきません。
なので太極拳では、
アップアップにならないように「リラックスして腰がきちんと据わる ようにしようね」っていうのが、
上虚下実という要求です。
上虚下実なんてそんなややこしい言い方をしないで、 始めからリラックスって表現すれば良いのでは?と思いますが、 元々太極拳は中国からの輸入品なので、 要点も中国語のままのものが沢山あります。
しかし一度覚えてしまえば中国語というのはとても便利な言語なの で、 太極拳を学ぶと同時に中国の文化も学ぶという意識で頑張って覚え て頂くことをお勧めします。
話を戻して、
では上虚下実というのが、 リラックスした状態ということが分かったところで、 ここからが本題です。
その上虚下実はどのように実現するのでしょう?
これは
「どうやったらリラックスできるのでしょう?」
という問いかけと同じなので、 何となく答えが想像できる方も多くいらっしゃると思います。
上虚下実の方法
その実現の方法は3つ
1、呼吸の調整
2、姿勢の調整
3、意識の調整
です。
呼吸の調整
まず1つ目の呼吸の調整
これはかなりの方が容易に想像できた答えの1つだと思います。
何か緊張する状況になった時は、
深呼吸
これはスポーツ選手が本番直前によくやっているのはテレビでもよ く見られる光景ですね。
太極拳では、
基本は自然呼吸。
気持ちの良い範囲で、ゆっくり吸って、ゆっくり吐く。
自分の呼吸を感じながらゆっくり繰り返します。
そのうち気持ち良くなってきて、
今自分が吸っているのか吐いているのか忘れてしまう位になればち ょうど良い具合です。
姿勢の調整
2つ目は、姿勢の調整。
始めにも緊張すると肩に力が入りやすいと書きましたが、
緊張すると肩だけでなく、全身に無駄な力が入ります。
緊張すると顔も強張りますね。
私事ですが、去年(2019年)の9月に結婚式をしましたが、 今あらためてその時の写真を見ると表情から緊張がバンバン伝わる 写真があり自分でも笑えてきます。
まぁ緊張するとそれ位顔にも力が入るということです。
なので、姿勢の調整の際、 全身の力を抜くというのが基本なのですが、
顔の力、肩の力だけでなく1つずつ全身に意識を向けていきます。
顔の力を抜く時は、眉間のシワを伸ばすイメージ、 口元を少し緩ませるようなイメージを持ってみると、 段々とおだやかな表情になります。
肩の力は上がっている肩をゆっくり下ろすように、 胸の力は胸を撫で下ろすようになど、 下の方へ順番に力を抜いていくと良いでしょう。
これを足まで繰り返し行なっていきます。
意識の調整
そして最後の3つ目、意識の調整
これは非常に簡単で、
緊張して上がってしまうなら、下げればよいという簡単な発想です。
色んな方法がありますが、
一番簡単なのは、足裏の感触を感じながらゆっくり歩くこと。
地面の感触が硬かったり、でこぼこしていたりという足裏から伝わってくる感覚に集中します。
右足、左足、右足、左足と地面から伝わってくる感触を大事にしながらゆっくり歩きます。
しばらくそれを繰り返していると、何だか心が静まって雲が晴れるような感覚になります。
これで自然と上に上がっていたものが下へ降りてきます。
頭にくるというのと反対のことを行うことで、
落ち着いて地に足がつく感じになります。
今回紹介したものは、誰でも出来る簡単な方法です。
太極拳で如何にリラックスしたらよいのか分からない方、
日々ストレスを感じているがリラックスする方法が分からない方など
是非一度試してみてください。
どなたかのお役に立てば幸いです。