太極とは
自分は病気で1年間ほぼ寝たきりで過ごした経験があります。
病気になる原因は色々とありますが、自分の場合はストレスが大きな原因だったと思います。
心の奥底ではこっちに行きたいのに、身体はいつもあっちに向かっている。
そんな状態を長く続けていると病気になるんだと思ってます。
病気はあっちに向かってしまった状態をこっちに戻してくれるという意味でも、
決して悪者ではないと思ってます。
でもやっぱり病気は苦しいので、病気になりたくありません。
長く病気と闘った経験のある人なら誰でもがそう思うんじゃないでしょうか?
じゃあ病気にならないためにはどうしたら良いのか?
それは心があっちに行きたいと言えばあっちに向かい、こっちに行きたいと言えばこっちに向かっていれば良い訳です。
要するに心の状態(欲求)と身体の状態や今おかれている状況が一致しているという事です。
これが自分で病気を患って、色々反省して、行き着いた健康になるための答えです。
そしてこの一致している状態というのが”太極”です。
太極拳を語られる時、”太極”について色んな難しい説明がされますが、
”太極”とは非常にシンプルで、
「一つの状態、融合した状態、全てが協調した状態・・・」などという意味です。
要するにバラバラなものが一つにまとまり、融合してバランスのとれた状態を指します。
コーラスやオーケストラと同じで、それぞれがバラバラに音を出しているように見えて、
全てが一致した時に絶妙はハーモニーを生みます。
ボケとツッコミと同じで、ボケだけでも笑えず、ツッコミだけでも当然笑えず、
ボケとツッコミが一緒になってお笑いになります。
敵と味方と同じで、対立している状態では争いは決して絶えませんが、
敵と味方が和諧して「敵」、「味方」というのもなくなって一つになった時平和は訪れます。
こういったバラバラなものが一つに完全に協調して融合した状態を”太極”といいます。
そしてその”太極”という全てが一つになった時、感動するような音楽、笑い、平和というような状態になります。
だから、”太極”という状態は別に太極拳に限った話では全くなく、どこにでもある訳です。
健康を保つ上でも、この太極であることが大事です。
嫌な事があっても、顔色ひとつ変えずぐっとこらえ続けるとストレスが溜まります。
心の状態と表情(身体の状態)が一致していないバラバラな状態です。
時としてこういう場合も必要ですが、長く続けていると病気になります。
同じ病気で入院していた人で、その後完治した人には海外に住むようになったり、大きく仕事を変えた人達もいます。
本来やりたかった事を叶えて、心の奥底で欲求していた事と、今の状態が一致して病気が治った良い例だと思います。
これも一つの太極です。
太極拳とは
太極拳は「太極」と「拳」という字から成っていることから分かる通り、
拳(武術)というツールを通して、太極になることを目的としています。
または、太極状態で武術を行うことを意味しています。
太極という完全にバランスのとれた状態を目指す上で、
その方法は漫才でもオーケストラでもなんでも良いのですが、武術を通して行うから太極”拳”なのです。
だから太極拳では、全身を一致させて、全てを連動させて動きましょうとか、
呼吸と身体の動きを合わせましょうとか、
心を静かにして、自然と同化しましょうというように、
全てを一つにすることを要求されます。
全てを一つにするのために、始めは動作は速くやるより、ゆっくり行ったほうが簡単だから太極拳の動きはゆっくりです。
当然速くても行えるようにしますので、あまり一般的には知られてはいませんが、速く行う太極拳もあります。
速く動いてもゆっくり動いても、いかなる状態でも太極という状態を目指します。
太極拳のシンボルに太極図というものがあります。
これを陰陽図とも言います。
この陰と陽というバラバラなものを一つに融合させて太極な訳ですが、
太極拳の動きの中で、肩だけの力で腕を上げたり、全身が連動していないバラバラな状態だと、
太極拳とは呼べず、陰と陽がバラバラな陰陽拳になってしまいます。
このように太極拳の考え方とは非常にシンプルで、
一つにするという目的のために武術という手段をとっています。
太極推手とは
推手とは、当て身(打撃)技を使わずに、相手に触れた状態で崩したり、投げたりする攻防技術です。
色んな武術がそれぞれの流儀に従って練習しています。
なので、太極推手とは、太極理論に基づいた推手となります。
太極理論とは前述した通り、全てと一つになることなので、
推手であれば、相手と一つになって(または、なるために)行うことを指します。
よく先生に「相手半分、自分半分」と言われますが、
相手の状態に関係なく無理矢理ねじ伏せようというのは太極推手ではありません。
だから太極推手では自分勝手にならないよう、相手の状態をよく感じて同調するよう心がけます。
それにはまず自分自身の状態が太極である必要があり、
全身が連動して動き、身体が安定して頭が冷静な状態で初めて、相手と同調できます。
これは推手に限った話ではなく、自分が慌てた余裕のない状態で、他人や周りの出来事を冷静には捉えられないのと同じです。
太極拳・太極推手で自分らしく
大きな病気をしないためにはストレスを溜めないことが大事です。
そのためには心と身体の状態が一致したバランスのとれた状態である必要があります。
そのバランスをとるために、太極拳の練習、推手の練習はうってつけです。
腰が座らない不安定な状態で立っていると、心も不安になります。
全身がつながるように立つと、心も落ち着いてきます。
全身をバラバラに動かしていると、緊張しやすくなります。
全身を連動させて動いていると、頭が冷静になれます。
呼吸を落ち着けると、様々な音が聞こえます。
リラックスして落ち着けば、心の声も聞こえやすくなります。
そうしているうちに自然に心の声に正直に動くようになります。
心があっちに行きたいと言えばあっちに向かい、こっちに行きたいと言えばこっちに向かっていきます。
そしてそれは、健康をもたらすだけでなく、自分らしく生きること、幸せに生きることにも繋がります。
太極拳は難しくありません。
とてもシンプルです。
健康に、自分らしく、幸せに生きる手段として、太極拳を取り入れてみては如何でしょうか?
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