太極拳を練習している方々はみんなどんな検証方法を使っているのかとよく考えます。
ゴルフの場合、”飛距離”というのも一つの尺度になると思います。
例えばAさんがこのフォームが正しいと言う。
そのフォームを試してみるといつもより飛びません。
また今度はBさんがさきほどのフォームとは異なったフォームが正しいと言う。
そのフォームを試してみると飛距離が大きく伸びました。
さてこのAさんとBさんの二つのフォームのうち”正しい”のはどちらのフォームなのでしょうか?
自分だったらBさんのフォームが”正しい”と信じます。
なぜならその方がよく飛ぶから。
ただ本当に”正しい”かどうかはもっと複雑で、この場合AさんにBさんのフォームをやらせたら飛距離が落ちる可能性だってあるし、
そもそもAさんの方がBさんより飛距離が出るかもしれません。Aさんのフォームを継続してやったら更に飛距離が伸びる可能性だってあります。
だからここではどちらが”正しい”かということを決めたい訳ではなく、
単純にゴルフだったら飛距離の長い短いというのはそのフォームが”正しい”かどうかの検証方法の一つになるということです。
では、太極拳の場合、その形が”正しい”かどうかの検証方法はどんなものがあるのでしょうか?
実はここの話はちょっとだけ複雑で、目的によって最適な方法というのは変わってきます。
先ほどのゴルフの話は太極拳よりシンプルで、ゴルフの目的は”出来るだけ少ない打数でホールカップにボールを入れること”
だから、一打目の飛距離は大事になる訳です。
でも太極拳の場合、各々目的はバラバラです。
太極拳を健康維持のためにやっている人はたくさんいます。
その場合、太極拳をやる前後で血圧を計って、血圧が低くなっていればその太極拳は”正しい”となるかもしれません。
表演競技のためにやっている人もたくさんいます。
そうであれば、大会で優勝したら”正しい”となるかもしれません。
また人によっては宇宙と一つになるためと言う人もいます。
その場合その人が宇宙と一つになっているかどうかの尺度を何で計ればよいのか難しいので何が”正しい”かはかなり曖昧です。
だから太極拳の形の”正しい”はその目的によって全く異なる場合が多々あります。
なので、まず何のための太極拳なのかを明確にする必要があります。
そうすれば今やっているその形が目的に適しているかどうかの検証ができるようになります。
自分は太極拳をやる目的はそれぞれ自由だと思います。
以前あるお客様は「おれはゴルフのために太極拳やっているんだ」って仰ってました。
太極拳の上達具合とゴルフの上達具合というのが正比例するそうです。
それもまた素晴らしい目的の一つだと思います。
自分の場合、昔は表演のためにやっていたし、その後は気功の要素も含め健康を一番にして指導をしていたし、現在は限定的ではありますが対人練習もかなり取り入れてやっています。
だから当クラブでは、自分の今までの経験を生かして、太極拳の目的を、
対人(強)、健康(健)、表演(美)どれにも共通していて、且つ派生していける部分を体得することとしています。
以上が当クラブの太極拳の目的である訳ですが、
その目的に適した形をしているかどうかという検証方法は、
まず健康になるかどうかというのは、何かの数値を計測することはやっていないので、客観的指標はありません。
ただ主観的な感覚ではありますが、その形が感覚的にイライラするのかそれとも落ち着くのか、体が冷たく感じるのかそれとも暖かく感じるのか、表情が強張るのかそれとも穏やかになるのか、気持ちが良くなるのかそれとも気持ちが悪くなるのか、練習前と練習後で体調は良くなっているのかそれとも悪くなっているのか等、を検証方法としています。
イライラすると血流が即座に悪くなって、にこにこすると血流がすぐ良くなることは科学的にはっきり証明されていることなので、上記のような健康にプラスに働く感覚を大事にしてます。
また、たまに膝を痛めてやってきたのに、練習後痛みが楽になって帰っていくという方がいますが、そういった”痛みの強弱の変化”というのも検証方法の一つです。
練習後、痛みがより一層強くなっていたらそれは間違った方法と見なしてます。
次に、表演で美しいかどうかという事については、太極拳の場合競技性を高くしないと(高難度の跳躍動作を入れたり、平行動作を入れる等しないと)、どの形が美しいか、優れているかというのが客観的に判断しにくいという性質をもっています。
ある程度のレベルを超える(途中でグラグラしないとか、姿勢の高低差がつけられるとか、肩に余計な力が入らないというような分かりやすい基準を満たす)と、あとはかなり主観的な判断となります。
何人かのプロボクサーのシャドーだけを見て、どれが一番美しいか決めようという試みに近いと思います。
だから当クラブでは、美しいかどうかは、一つ目の健康になるかという事と、次に書く対人で有効であるかという事を満たした結果自然に生まれた形を”美しい”としています。
なのでその形は同じ動作をやっていても人によって若干違ってきます。
全員違う身体をしているので(=同じ身体を持った人はいないので)、そこから自然に生まれる形も違ってきます。
ただその形は、客観的基準は持たないものの、見た人がそれを不自然に感じることは多くないという印象です。
あとは、表演の場合かっこよく見えるリズムとか目の使い方とか色んなテクニックがあるので、大会の審査基準に合わせたり、表演を見せる相手によって使い分けることはします。
そして、対人で有効であるかどうかというのは、
これが中でも一番簡単で、誰でも分かる検証方法になります。
対人とは言っても、相手を殴り倒すとかそういった方法ではなく、相手と軽く手を重ねて少し力をかけ合うというものです。
ある形をとった時に、どの角度にも力が入り、且つどの角度にも変化ができる形があります。
それはその形をとって外から力をかけるという検証方法で、誰もが客観的に判断することができます。
実際に数値で出したければ、単純に大きな力が出るので更にはっきりわかるでしょう。
体格や体重というのは絶対的ですが、その身体で出せる力というのは構造(骨盤の角度や肘の位置など)を変えると大きく違ってきます。
それは単純に力の強弱で計れるのでとても簡単な検証方法です。
そしてその形をとった時、やっている本人は逆に力を抜いた感覚になることも主観的ではあれど尺度になります。
対人を利用した、検証方法はまだまだ沢山あるのですが、
当クラブでは上記の「力は入れていないけど、力が入る位置」(=ラインを取ると呼んでいます)というのを見つけていく作業を大事にしています。
以上のように、主に一つ目の「主観的な良い感覚」というのと、三つ目の「構造で力が入る形」というのを矛盾なく作ることを目的達成の手段としています。
実はこれは、中国武術の世界では「内外相合」、「心身合一」、「陰陽融合」など様々な言い方で伝えられてきています。
なので特段目新しい話ではないですが、ここではそれを如何に検証するのか?ということを主旨として書きました。
どなたかの参考になれば幸いです。
また、何か有効な検証方法をお持ちの方「こんな検証方法もあるよっ!」というお声頂けたら、それ以上に嬉しいことはありません。
ご連絡頂けたら幸いです。
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