昨日は通例の推手練習会。
畳が柔らかいので、受け身をとっても痛くないため、いつもは練習しにくい活歩推手(かっぽすいしゅ)をメインに練習してます。
まず活歩推手という言葉を初めて聞く人は以下の動画をちょっとだけ見てみてください。
上海で推手を始めた時にまずやったのがこれでした。
毎日先生に吹き飛ばされたり、床に叩きつけられながら
「あ〜太極拳ってのは大変だ」
ってよく思いました。
特に細かな指導はなく、とにかく毎日2時間位投げ飛ばされまくり、
先生は、「投げられるのが一番いい練習になる。」って仰っていました。
まるで車にひかれたような衝撃で、いつ投げられたのか分からず、
いきなり天井が見えて頭を打つなんて事もありましたが、
なるほど太極推手というのはこういうものなのかと思っていました。
そういった練習も続けていくと、危険察知能力といいますか、
自分の身が危ないと感じるのか、自然と衝撃を分散するような受け身をとるようになっていきます。
その時の練習場所は薄いカーペットは敷いてはいたもののほぼ普通の床だったので、
まともに落ちるとかなりの衝撃でそれなりに痛かったです。
始めの頃は、突然天地がひっくり返って、自分が空中でどんな状態なのかも分からず、
どこから落ちるのかも予測できないので、落ちた時の痛みと共に小さなパニック状態になってました。
しかし、それも当たり前になってくると、同じように落とされても痛いだけで気持ちは冷静を保てるようになります。
そしてそのうち投げられる瞬間を察知できるようになり、瞬間に「あっ飛ぶ」というのが感じられるようになりました。
そうこうしてるうちに日に日に落ちた時の痛みが少なくなっていきました。
これは単純に痛み慣れしたというものではなく、床に叩きつけられる瞬間に、
落ちた箇所から伝わる衝撃を全身に分散するような形を瞬時に取るようになるからだと考えてます。
時に腕も足も相手に取られた状態で落ちることがありますが、
そんな時どこから床に落ちるのかは自分で選択することはできません。
当然頭から落ちたり、首から落ちたりすることもある訳で、それでもその箇所から全身に衝撃を分散する必要があります。
というか、そうしないとかなり危険です。
だから人間の身体は、危険回避のために自然にその術を身につけるのだと思います。
そうやって徐々に活歩推手に慣れていきました。
これは先生の技を掛ける力の具合も絶妙だったのだと思います。
これが自分の最初の段階で経験したことでした。
前置きが長くなりましたが、実は本題はここからで、
自分はそういった経緯で推手を始めたので、そういう練習が当たり前だと思っていました。
活歩推手をやる時は先生に投げられまくって受け身を覚えるものだと思っていました。
しかし問題はここにありました。
昨日の練習で新しい投げ技を教えるために生徒さんにかけたら、
「これは受け身がとれない」とのこと。
その方は合気道を長年やっていたので、受け身が非常に上手で、
前受け身、後ろ受け身を一人でやっている姿はびっくりするくらいなめらかです。
しかし、その方曰くその技を掛けられる時は、真っ逆さまな状態でまっすぐ床に落ちるため、
合気道の受け身が通用しないとのこと。
活歩推手では前述の通り、時に腕と足を相手に取られてしまっている状態で落とされるので、
どこから落ちるのか分かりません。
なので、受け身を取る瞬間に手を床に叩きつけたり、足を同時につけようとする習慣は非常に危険です。
柔道や合気道ではそういった基本的な受け身の練習をするようですが(一部の情報しか知らないのでそうでなかったらすいません)、自分が学んだ方法は手や足をほとんど出しません。
この点が合気道を長年経験してきた生徒さんにはやりにくかったようで、
お話を聞いてお互いに非常に合点がいきました。
そして、どんな箇所から落ちてもその衝撃を分散する形を瞬時にとるには、落ちた瞬間に身体がバラバラにになってしまってはならず、全身を一つにまとめる形をとる必要があり、その形をとるための練習を少ししたところ、
腹筋がきつくて形が保てないということが判明。
ある程度身体作りができていないとあの落ち方は危険だという事になりその技は中止しました。
その方は受け身は何年もやってきましたが、それでも身体作りが必要となってしまう。
それ位受け身で要求されるものが高い。
それがましてや運動経験のあまりない方だったら、受け身だけでかなり練習を積む必要がでてしまう。
活歩推手をやっていく上で大きな課題の一つになりました。
そういった危険な落ち方をする技を排除して行うことも有効な手段ではありますが、そうしてしまうと套路中の動作を如何に使うかが理解できないし、そういう落ち方へも対応できることで套路での発勁動作への理解も格段に高まるので、練習は必須です。
しかし競技推手のルールでは、台湾では禁止されていたり、大陸では禁止されていなかったりと様々(大陸にも様々なルールがある)なので、競技として安全に行う際は、ルール上排除するのも一つかもしれません。
ただ今回、問題を意識したことによって、より安全にやっていくために必要なことが認識できたのは大きな収穫でした。
そして誰でもできるように練習を体系化していくための方法が一つまた分かったことは大きかったです。
習得は早いですが、決して皆んなが皆んな頭を打ちつけられ悶えながら学んでいく必要はないと思います(笑)
活歩推手をやる上で、安全を考慮することは最も大事なことです。
安全にやるというだけでもハードルはそれなりに高いということがわかりました。
ただそういった理由が流行らない原因にならないよう、誰が見ても安全で分かりやすい体系化を目指したいと思います。
活歩推手というのは日本ではまだまだ知名度の低いものですが、太極拳を理解する手段として非常に有効なのは間違いありません。
そんな太極拳を理解するための一つのツールとして、多くの人が活用するようになったら嬉しいなと思います。
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